INTRODUCTION
2001年、中尾製作所は開き戸用のドアストッパーの概念を覆す製品を世の中にリリースした。当時は床や壁に設置した棒状の立ち上がり(出っ張り)に対し、扉の下部に取り付けたフックを引っかけ、開いた状態をロックするのが主流だった。このタイプでは出っ張りによってデッドスペースが生じてしまうほか、フックを引っかけるにもしゃがむ動作が必要となる。これら従来品の課題点を克服し、立ったままで固定と解除を行える画期的な操作性を実現したのが「nakaoのドアストッパー」である。この製品は住宅建築市場で爆発的な人気を得た。しかし、開発作業はここで終わりではなかった。中尾製作所はこのヒットを「出発点である」と捉え、時代ごとのニーズと対峙しながらさらなる完成度を求めて開発に取り組んだ――。

nakaoの歴史が詰まった
初代ドアストッパー
2001年に販売が開始された「nakaoのドアストッパー」は、中尾製作所が創業当時から得意としていた蝶番の動きをベースに、1980年代にヒットした「マグネットキャッチ」などで利用したマグネットを取り入れて機構(動く部分)を設計している。さらに、家具金物の製作時代から培った「扉をキャッチする」という要素も加えており、中尾製作所の技術の歴史が詰まった製品といえる。床に設置した薄い平座の上に扉が来ると、扉に設置したマグネットに反応して平座から金具が立ち上がり、扉金具の凹部分にはまることで「カチッ」と扉を止める仕組みだ。

初代ドアストッパーの開発を担当していた宮本信也は「単に扉を止めるだけでは十分ではない」と考え、立ち上がり金具とそれを受け止めるキャッチの部分の設計に時間を費やしたという。
- 宮本
- 「ユーザーの使い勝手を第一に考え、風を受けても簡単に外れず、少々激しく扱っても大丈夫な製品を目指した。また、1日に何十回と使用しても部材の摩耗で機能が著しく劣化しないよう素材選びも注意深く行った」

要望や注文は次のゴールであり
製品の完成度を高める力となる
初代のリリースから4年後の2005年、新しく開発された「ドアストッパーⅡ」がロールアウトされた。設計を変えたそもそもの理由は建築基準法の改定が影響している。室内の換気を促進するため扉と床との隙間の規定が数ミリ増えたのだ。これに伴い立ち上がり金具のサイズを大きくするなどの変更が必要となった。ドアストッパー開発を指揮する太田吉英は、これを機にそれまでにあった要望も取り入れてリニューアルしようと考えたという。
- 太田
- 「施工会社や設計事務所などから『デザイン性』を求める声が挙がっていた。機能を満たすだけではなく、見た目のブラッシュアップを課題とした」
最も問題だったのは取り付けネジの存在だ。「ドアストッパーⅡ」ではネジが外から見えないようにカバーをはめる構造とした。「要望や注文の多さが、住宅建具関連の特徴の一つ」と太田は語る。一般ユーザーが頻繁に利用する製品であり、時には乱暴に取り扱われることもある。販売数の増加に比例して、ユーザーからの声も増えた。


常にアンテナを張り
身近なものから着想を得る
ドアストッパーの開発で中心的な役割を果たしてきた嶋谷泰毅は、要望や注文が多くなる現象を「期待されている証」と受け止めている。
- 嶋谷
- 「『もっと良くならないか?』という声が多いほど製品は進化する。要望や注文は次のゴールを示してくれているともいえる。それらを一つひとつ克服していくことで、製品の利便性や汎用性、安定性、完成度が増していく」
中尾製作所の開発部を率いる太田は「開発のヒントは身の回りのものすべてに存在する」と語る。事実、ドアストッパーにロック機能を加えた「ロッキンカイト」(2007年リリース)の施錠・開錠の機構はボールペンから着想を得た。高層マンションなどにおける突風への対応を念頭に開発されたこの製品は、扉金具の頂点に設けたボタンを押すことでロックのオン・オフが切り替わるのが特徴だ。図面を描いた嶋谷は「ある時、手にしたボールペンをカチカチとしながら、このようにボタン一つで状態が簡単に切り替わる仕組みを取り入れようと閃いた」という。



nakaoは、2016年までに
計8つのドアストッパーをリリースしている

需要を獲得し続ける
確かなモノ作り
2013年からリリースしている「カイトプラス・シリーズ」は、これまでの機能は残したまま、内部構造を見直すことで、全体の軽量化や生産コストの圧縮、コンパクト化などを実現した製品だ。ロックの施錠・開錠方法も、扉を押すだけというシンプルさで操作性も向上している。
- 太田
- 「より多くのニーズに応えるためであり、一方で中尾製作所の独自ブランドの強化を意識して、より洗練された製品を目標に開発した」
2016年までに、初代「ドアストッパー」を含め8つのシリーズ製品を開発しているが、特筆すべきはすべての製品が今も現役で流通している点にある。開発するたびに要望や注文、課題点が挙がり、次のステップへ向けて新しい製品の開発を続けてきた。しかし現在では、それぞれが個性を持つ製品として支持されるようになっている。
初代の開発を担当した宮本は「15年以上経って、いまだに売れているのは誇らしい」と語る。
- 宮本
- 「常に『nakaoが一番だ』という想いを持って開発に臨んでいる。この気持ちは営業部や製造部など他の部門も同じだ。いつの時代も社員一人ひとりが『確かなモノ作り』に向き合っているからこそ、100年近くも中尾製作所が継続していると思っている」
開発年表
MEMBER

太田吉英OTA YOSHIHIDE
「動きだけではなく『動き方』にこだわった機構を開発できるのが、中尾製作所の強みの一つである」

宮本信也MIYAMOTO SHINYA
「新しいことに挑戦し続け、世の中に広く浸透する製品を作り、中尾製作所というブランドを広めていきたい」

嶋谷泰毅SHIMAYA HIROKI
「創業からの中尾製作所の歩みを振り返ると、自分達にしか実現できないモノ作りが必ずあるという気持ちになる」
※掲載内容は、インタビュー当時のものです。