現場から湧き上がる発想
創業当時から数十年間は、仏壇や家具の金物製作を生業としていました。金物職人としての修業を積んだ初代社長・中尾栄一を中心に、熟練の職人達は金型技術を駆使してユニークな加工を可能にしていきます。一つ例を挙げると、板を巻き込んで細い管を作る加工は、何千万円もするドイツ製の特殊機械を用いて行うのが当時は一般的でした。しかし、中尾製作所では金型とプレスで可能にする技術を確立。この加工方法で蝶番の管部分を作っていました。「工夫すれば作れるのではないか?」というモノ作りに対する姿勢と、数多くの加工を金型で実現してきた技術の積み重ねは、中尾製作所の財産です。
高度成長期に入り、生産のスピード化が求められる時代になると、職人の創造力に頼っていた金型製作を図面化、組織化、自動化へとシフトしていきました。しかし、仕組みを変えたからといって職人による「金型技術の蓄積」が消えたわけではありません。先に紹介した細い管を作る技術は、その後も研鑽を重ね応用することにより、1980年代以降の住宅建具用の金物時代でも活躍。中国進出への足掛かりを築いたのもこの技術でした。
21世紀になり効率化、合理化の進んだ現在でも、「金型技術の蓄積」は中尾製作所のモノ作りの母体であることに変わりありません。新しい製品の中にも、当時からの技術の系譜が数多く見て取れます。技術と共に、モノ作り現場の熟知から生まれる豊かな発想力や、アイデアの具現化に向けた執着心など、職人気質な精神は脈々と受け継がれています。